コラボレーション事例

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トイレで困っている人のため、 街中に思いやりの花を咲かせる!

オープントイレプロジェクト

「みんなでつくるユニバーサルデザインマップCheck A Toilet」を展開するNPO法人Checkさんと、株式会社大川印刷さんのコラボレーションで始まった「OPEN Toilet Project」。高齢者や障がい者の人など、外出する際に「どんな機能をもったトイレがどこにあるのか」ということがわからず困っている方たちに、少しでも外出を楽しんでもらい気軽にトイレを借りてもらおうと、OPEN Toilet Projectは始まりました。NPO法人Check代表理事の金子健二氏と、株式会社大川印刷代表取締役社長の大川哲郎氏のお2人から、協働のきっかけや今後の展望について、お伺いしました。(聞き手:田中 多恵)

―聞き手:

NPOと企業との協働の重要性が各方面で叫ばれていますが、現実的にはカルチャーや仕事の進め方の違いなどから、なかなか協働することは難しいというお話も耳にします。お2人の出会いのきっかけはいつどのような形だったのですか?

―大川氏:

きっかけは、2010年9月の「YOKOHAMA  SOUP」でした。プレゼンターとして金子さんが登壇されていて参加者として金子さんのプレゼンを聞いていたのですが、スマートフォンを活用して参加型のトイレマップを作っている、というお話を聞いて感銘を受けました。これから高齢社会がますます進む中で、金子さんのやっている事業の重要性はますます増してくる、と感じましたね。

一方で、障がい者や高齢者の方の中にはパソコンやスマートフォンを使いこなせない方もいらっしゃるのではないか、であれば調べなくても多機能トイレがどこにあるのかをわかるように、店頭などにサインとして表示する必要があるのではと直感し、プレゼンテーション後の懇親会の席で金子さんに話しかけたのです。

―金子氏:

2003年から大阪の社会福祉協議会が「街角トイレ運動」を取り組んでおりました。公共トイレ等に、「トイレ貸しますよ」ということを示すシールを張って表示をして、障がい者やお年寄りに優しいまちづくりを進めていました。大阪の人たちからはこの取組を他の都市でもやるべきだ、という声を頂いていたのですが、なかなかきっかけがありませんでした。そんなとき、大川社長がお声掛けくださったので、「よし、前に進めよう」と思いましたね。

―聞き手:

YOKOHAMA SOUPでの出会いから現在まで、約1年ちょっとという期間だと思います。プロジェクト立ち上げ当初からこれまでは、どんなアクションを起こしてこられたのですか?

―大川氏:

まずは、横浜市内の商店街や観光地などを金子さんと回り、取り組みのコンセプトについての説明、トイレに関する現状のニーズや課題の聴きとりを行っていきました。商店街全体など、全体的な理解を頂くのは難しかったですが、現実的にお客様が集中すると公共のトイレが少ないために問題となっている商店街のお話や、既にお客様から申し出があれば積極的にトイレを貸している店舗なども少なくないことが分かってきました。そして東日本大震災後は、被災地においては高齢者・障がい者の利用、女性や子供の安全な利用などの課題、被災地外では帰宅困難者のトイレの問題など、国民のトイレに関する問題認識は変化したのではないかと感じています。そのような変化もあり、ご賛同頂いた方が他の店舗にも呼びかけてくださる、ということがあり、少しずつ輪が広がっていきました。横浜観光コンベンションビューローの助成金が下りたことも弾みになったと感じます。

―金子氏:

当初は、多機能トイレに絞ろうと思っていたんです。ただ、多機能トイレ自体数も少ないし、観光客にとっては、普通のトイレであっても情報があること自体がありがたい。だから、多機能トイレではないトイレにも対象を広げました。現在、賛同してくださっている店舗は、約10件となっていますが、この輪をどんどん広げていきたいですね。

―聞き手:

元町の近沢レース店さんや、霧笛桜さん等、横浜を代表するお店の賛同を取り付けられたとのことですが、今回のOPEN Toilet Projectに参画すると、お店側にはどのようなメリットがあるのでしょうか?

―金子氏:

その店舗にどんな機能のトイレがあるのか、をステッカーで表示すると同時に、インターネット(Check A Toilet、その他サービス)と店舗・施設の入り口から貸し出しサインを情報発信します。このことにより高齢者・障がい者・お子さま連れのご家族だけでなく、誰もが街の各店舗のトイレ情報を検索できるようになりますので、来店促進につなげる効果が見込まれます。

―聞き手:

なるほど。トイレで困っている人にとっても、来店客を増やしたいお店側にとってもメリットのある仕組みなのですね。さらにすそ野が広がっていくといいなと思いますが、今後の展開はどのようになっていくのでしょうか。

―大川氏:

1店舗でも多く、賛同店舗を増やしていきたいと思いますね。そうすることで障がいの有無にかかわらず、トイレの心配を減少させることができればと思います。また外国人の方々にもフレンドリーで、ホスピタリティあふれる国際都市~国になっていくことができればと思います。

―金子氏:

私の方では、自治体に声をかけながら、全国にこの運動を広めていきたいですね。すでにスカイツリー開業を目前に控えた墨田区や、四日市エリア等からはお問い合わせを頂いています。今回、NDCグラフィックスさんにデザインしていただいたお花のマークが街中、ひいては日本中に広がっていくといいなと思います。

―聞き手:

ここまでお2人のお話を伺ってきて、とても息のあったコンビネーションだなと感じました。NPOと企業とが協働するメリット等について、それぞれどのように感じていらっしゃいますか?

―大川氏:

Checkさんの素晴らしいところは、トイレに関する情報やノウハウについて質・量共に圧倒的に蓄積されていることですね。全国に多機能トイレは、10万件あるといわれていますが、そのうち3万5000件の情報がすでにCheckさんの元にあるそうです。このプロジェクトを前に進め、トイレに困っている人たちが安心して外出できる社会に少しでも近づけるためには、NPOがもつ専門性や強みを活かし、企業である我々が本業を生かしつついかにプロジェクトに更なる付加価値や推進力を生み出せるか、ということが問われていると思います。今後は企業としてのネットワークを活かし、店舗だけではなく企業のCSR担当者の方々などにも参画を呼び掛けていきたいと思っています。

―金子氏:

NPOとして事業を開始して以来、ITを軸に突っ走ってきた感があります。今回、印刷会社さんとご一緒することで、新たな展開を可能にすることができました。大川印刷さんとの関係は、お互いに弱みを補いあえる関係性だと思っています。

―聞き手:

大川さん、金子さんこの度は貴重なお話、ありがとうございました。

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