NPO訪問レポート

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不登校やひきこもりの人々も自由に過ごしながら、社会参加ができる場所

NPO法人アンガージュマン・よこすか

「わたしはここで自分がやりたいことをやります」

「あなたは、ここで何をやりたいですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

NPO法人アンガージュマン・よこすか』では
事務局長石井さんからこのような問いが投げかけられます。

 

『NPO法人アンガージュマン・よこすか』は、神奈川県横須賀市で、不登校・ひきこもりのご本人、
周囲の方々と共に社会参加(=engagement)を目指しているNPO法人です。現在、居場所(フリースペース)・
学習サポート・就労支援・相談・孫の手/お届け便・はるかぜ書店の運営を行っています。

 

この場の一番の特徴は、何もかも自由であるということです。
居場所に来るのも、学校に行かないのも、働くのも、すべて自由。何もルールや「こうあるべき」という言葉はありません。
ただ、そこにいるなら、自分のできることは自分たちでやっていく。
気づいた人がやる。誰が「サポートしてあげる人」で、誰が「サポートしてもらう人」かという上下関係はありません。
電話が鳴っていたら、出られる人が出る。散らかっていたら、気づいた人が片づける。これが基本です。

 

今回は、「はるかぜ書店」に隣接している「harucafe」でお話を伺いました。壁一面のレンタルBOXには、
地元のさまざまな手作り商品が並び、とてもあたたかい空間でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この書店は、ひきこもり・不登校の方が、仕事を通じて社会参加を目指していく場です。

この書店がうまれたきっかけは、アンガージュマンさんが、研修の場所を探していたところ、
専門書を扱う書店を手放したいという方が偶然いらっしゃったというところにあります。
折角お向かいにスペースあるなら、本屋さんをやってみよう、とスタートされました。

はじめてみると、本屋さんという「なりわい」を持つことで、今までの「若者支援のNPO」よりも「若者ががんばっている本屋さん」
ということで自分たちが何者かが分かりやすくなり、商店街の方々との距離もぐっと近づいていったそうです。

 

「今では商店街と協力し合える関係が築けているという点が私たちの団体の特徴です」
と石井さんは語ります。

NPOなどの支援団体の事業は、街の中で他の商店主さんと交わりを持ちたくても、
なかなか難しいことも多いですが、商いをしながら商店街に参加しているアンガージュマンには
「人と関わらなければいけない状況がある」ことによって、自然と商店街やみなさんやお客さんと接していく環境があります。

 

その中から、いつしか商店街の方々が、週刊誌1冊の配達をアンガージュマンさんの若者に頼んで下さったり、
商店街のアーケードの飾りつけを発注して下さったり という形で応援して下さる関係性が生まれてきました。
もちろん、商店街のイベント等があれば、若者たちは積極的にお手伝いもします。
商店街のお母さんたちが気兼ねなく家族のように「もっと大きい声出しなさいよ、がんばりなさいよ」と接してくれることが、
ひきこもり・不登校の方の自己肯定につながっていきます。

 

最近では、商店街や地元の中小企業の方から、「誰か若い人いませんか」と声掛けてもらい、
となりのパン屋さん等で、フリースペースにいた子がアルバイトしていたり、就職につながったりということもでてきているそうです。
「徹底的に何をやりたいか」が問われる。
これはたとえ引きこもり、不登校など関係なく誰でも、簡単ではないかもしれません。

 

世の中には、決まりやマニュアルがあふれています。
これまで私たちもそのように教育されてきたというのもあります。

 

アンガージュマンさんでは、決まりやマニュアルがありません。
それで対応できる社会ではなく、その場その場で判断していくしかない、と考えているからです。

研修生には「プログラムがあればいいのに」「書いておいてくれればいいのに」という声もあるようです。
石井さんは「あえて必要以上の手助けはしません」といいます。人に助けを求める力も重要なので
「わからないんだったら何度でも説明するから。それも練習だと思って。なにかやりたいんだったら
それは是非それができる環境をつくっていきましょうね。」といいます。

 

「本人の準備ができていなければうまくいかないしできていれば勝手に出ていく。」
「本人の自覚があってはじめて私たちが力になれる部分がある。」
という言葉に強く表れているように、とことん主体性を尊重する場ということがわかりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

アンガージュマンさんが目指す成果は、ここに集う人たちの進学や就職というよりも、
「自分を肯定して、自由に生きられること、周りの人と関わりたいという気持ちになること」です。
その結果、図らずとも、また学校に行きたい、就職したいと本人が考えるようになることが多いのだそうです。

 

今後は、もっと周囲の人々にご理解、共感頂く「惹きつける力」を上げていきたい、
とおっしゃる石井さんはとても輝いておられて、あっという間に時間が過ぎてしまいました。

 

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